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必殺仕事人から皇帝のペット世話係「昔の中国で本当にあった仕事五選」

前回の記事では、中国で新しく生まれた仕事をご覧にいれました。今回は歴史を遡ってみましょう。中国は五千年という悠久の歴史の中で、様々な仕事を生み出してきました。時を経るうちに、消えてしまった仕事もあれば、今に至るまで残されている仕事もあります。これらを知ることで、当時の世相や文化背景だけでなく、中国が歩んできた歴史そのものを垣間見ることが出来るでしょう。

①皇族のみに飼うことが許された「お犬様」の世話係

―ぺキニーズ飼育員(京巴饲养员)

「ペキニーズ」とは中国原産の犬種のことで、中国では「京巴(ジンバー)」と呼ばれています。体は小さくとも、ライオンに似た風貌と、気高い性格を併せ持っていることから、歴代王朝で寵愛されてきました。門外不出の動物としても知られており、庶民による飼育は許されないだけでなく、盗んだ者は死刑に処されていたくらいです。

ペキニーズの飼育を担当していたのは、宮廷に仕える宦官たちでした。お城の中を散歩するときは香水をふりかけ、最上級のお肉を餌として与えていたそうです。さらに、ペキニーズが寝る前には、犬小屋にあるシルクのマットを人肌で温め、叩いて柔らかくするという徹底ぶり。皇族と同じ扱いと言っても差し支えありません。「お犬様」に対して粗相でもあろうものなら、飼育員の首が飛ぶこともありました。「生類憐れみの令」を布いた徳川綱吉に負けず劣らずです。

②僧侶という隠れ蓑を利用して「うまみ」にありつく

―ニセ和尚(假和尚)

和尚になりすましてお布施をねだる人のことです。唐と宋の時代は仏教が全盛を極めていました。和尚さんというだけで尊敬されていましたから、この時期は特にニセ和尚がはびこっていたと言われています。

ご存知の通り、和尚は肉を食べることも酒を飲むこともおろか、結婚すら許されていません。つまり、二セであっても、様々な戒律に縛られてしまうのです(あくまでも人前では)。お布施で糊口を凌ぐことは出来るかもしれませんが、それ以上のメリットはあるのでしょうか。

まず、税金を納める必要がありません。また兵役からも逃れることができ、さらに陵墓や長城の建築現場に駆り出されることもなかったそうです。こういった国家主導の強制労働は徭役(ようえき)と呼ばていました。始皇帝が長城の建築を命じた時は、全人口の5%にあたる百万人近い人たちが動員されたとあります。ニセ和尚は、これらから逃れ、人生を謳歌するために、「僧侶」という身分を隠れ蓑にしてたのです。

ちなみに現代でもニセ和尚たちは世界中で活躍しています。怪しいと思ったら、僧尼の証明書である「戒牒(かいちょう)」の提示を求めるといいらしいですよ。

③最下層の人たちに課せられた労役

―長城建築労働者

長城の話が出たので、ついでにこちらも紹介させてください。前項でも述べた通り、長城の建築には徭役によって駆り出された労働力が投入されていました。また、時代によっては罪人や捕虜、貧農といった人たちも使役されていたようです。いずれにしても、最下層の人たちが従事していたことに間違いはありません。

訪れたことのある方ならお分かりかと思いますが、長城は険峻な尾根や砂漠といった場所に建てられています。過酷な労働環境により、命を落とす人も多くいました。そういった人たちは弔われることもなく、その場に埋められ、長城の一部となっています。累々たる屍の上に築かれたのが万里の長城なのです。

④うそ泣きと思わせないのがコツ

―泣き屋(哭丧人)

赤の他人の葬式に参列し、泣きじゃくるのが仕事です。泣きのプロであるからには、時には遺族よりも激しく、感情を込めて泣かなければなりません。この仕事は儒教の影響が色濃い中国や韓国で多く見られ、日本でも旧習として残っている地域があります。参列者の涙の量が故人の徳を表し、また泣き声によって死者を蘇らせたり、悪霊を追い祓うことが出来ると考えられていたようです。もちろん泣き屋を雇うにはお金がかかるため、大勢の泣き屋を雇うことはお金持ちのステータスとなります。

泣き屋を一人雇うといくらかかるのでしょうか?調べたところ、古い時代のデータは見当たりませんでした。その代わり、現代の四川省で泣き屋を営む人の話では、40 分で830元の収入が得られるそうです。

⑤歴史をも動かす仕事人

―刺客

中国における刺客の歴史は古く、司馬遷の『史記』にも「刺客列伝」という名の記述があります。代表的な刺客といえば、秦王・贏政(後の秦始皇帝)の暗殺を試みた荊軻(けいか)でしょう。このエピソードは『荊軻刺秦王』というタイトルで、映画や京劇の題材にもなっています。荊軻は剣術に秀で、酒を好む豪傑でしたが、いわゆる職業的な刺客ではありませんでした。史記では、秦と敵対関係にあった燕の太子丹からのゴリ押しがあったため請け負ったとあります。出陣にあたっては、荊軻を上等の旅館に泊めて、美味しい食べ物と美女をあてがわれています。彼の一大決心に報いると同時に、ちゃっかり恩を売った。

また、赤穂浪士の様に主君の恩義に報いるために刺客になる者もおれば、ゴルゴ13 の様に報酬契約にのっとって任務を全うする者もいたようです。また複数で任務に当たる場合も、単独の場合もありました。己の命を賭して任務を遂行せねばならず、失敗して捕らえられば死は免れません。あの荊軻も、秦王に八つ裂きにされた上、絶命した後もズタズタに斬りつけられたと言います。成功すれば英雄と称されますが、失敗者には悲惨な死が待つのみ。まさにハイリスク・ハイリターンの究極と言えるでしょう。

いかがだったでしょうか。

他にも鉛を金に変える「錬金術士」や、亀の甲羅に入ったヒビ割れから吉凶を占う「甲骨占い師」、果ては絶対権力者である「皇帝」など、個性豊かな仕事が沢山あります。今回は『宰相与侠客』という書籍から選出しておりますので、興味の有る方はぜひご一読ください。

古代の中国にタイムスリップできるなら、あなたはどんな仕事に就きますか?

参考資料:

『宰相与侠客』——你可能喜欢或厌恶的古代中国的100 种职业Sarah Tsiang 著楊寅訳中央広播電視大学出版社

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A3%E3%81%8D%E5%A5%B3